K-002 どんな時に膝が痛い?|痛む動作から考える原因
【後編】長く歩く・走る・ジャンプ・ひねる・夜間痛|注意したい膝痛
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
前編では、歩き始め、立ち上がり、階段、坂道、正座、しゃがみ込みなど、日常生活でよくみられる膝痛について解説しました。
後編では、長く歩くと痛い、走ると痛い、ジャンプすると痛い、ひねると痛い、寝返りで痛い、安静時や夜間にも痛い、といった症状から何を考えるのかを解説します。
11.長く歩くと膝が痛い
長時間歩行で膝が痛くなる場合、まず膝そのものの変形性関節症などを考えます。
ただし、ここで忘れてはいけないのが腰由来の症状です。
腰部脊柱管狭窄症などでは、「ある程度歩くと脚が痛くなる」「休むとまた歩ける」という間欠性跛行がみられることがあります。
そのため、膝だけが局所的に痛いのか、太ももやすねまで痛いのか、しびれを伴うか、立ち止まるだけで楽になるのか、腰を曲げると楽になるのかなどを確認します。
長く歩くと痛い=必ず腰からの痛みではありません。しかし、歩行距離に応じて症状が出て、休憩で改善する場合には、腰も診察する必要があります。
12.走ると膝が痛い
普通に歩く程度では痛くないのに、走ると痛む。この場合には、日常生活より強い衝撃や繰り返し荷重が膝に加わったときに初めて症状が出ていると考えます。
そのため、関節軟骨、軟骨下骨、半月板、膝蓋大腿関節、腱などの問題を考えます。
また、「最近ランニングを始めた」「急に走る距離を増やした」といった運動量の変化も重要です。
13.ジャンプすると痛い|ジャンパー膝
ジャンプや着地を繰り返す競技で膝前面が痛む場合には、膝蓋腱障害(ジャンパー膝)を考えます。
ジャンパー膝は特に、バスケットボール、バレーボール、陸上競技など、ジャンプ動作を繰り返すスポーツでみられます。
膝蓋腱への反復する高負荷が関係し、一般的には膝蓋骨の下側、膝蓋腱周囲に痛みが出ます。
「ジャンプすると痛い」だけでなく、どこを押すと痛むかも重要です。
14.膝をひねると痛い
膝をひねったときに痛む場合には、半月板をまず考える病態の一つに入れます。
半月板には、体重がかかった状態で膝をひねることで負荷が加わります。
ただし、内側側副靱帯、外側側副靱帯、前十字靱帯、後十字靱帯などの靱帯損傷でも、外傷時のひねり動作が関係することがあります。
重要なのは、どういう方向へ膝をひねったのか、外傷だったのか、日常姿勢だったのかです。
15.あぐらや横座りで膝が痛い
あぐらやいわゆる横座りでは、膝に単純な曲げ伸ばしだけでなく、回旋や内反・外反方向の力が加わります。
ただし座り方には個人差があります。
そのため、「あぐらだから外側の病気」「横座りだから内側の靱帯」と単純に判断することはできません。
実際にどの肢位で、膝のどの場所に痛みが出るのかを確認します。
半月板、側副靱帯、関節包などへの負荷を考えながら診察します。
16.寝返りで膝が痛い
「寝ているだけなら痛くないけれど、寝返りした瞬間に膝が痛い」という場合があります。
寝返りでは脚の重さによって膝に回旋や内反・外反方向の力が加わることがあります。
そのため、関節の炎症、半月板、靱帯、関節包などに問題がある場合、寝返りで痛みが誘発される可能性があります。
ここで重要なのは、「寝ているだけでも痛い」のか、「寝返りで動かした瞬間だけ痛い」のかを分けて聞くことです。
17.安静にしていても膝が痛い
多くの変形性膝関節症などでは、歩行や立ち上がりなどの活動で痛みが強くなります。
そのため、荷重していないのに強く痛むという症状がある場合には注意が必要です。
もちろん、進行した変形性膝関節症でも安静時痛が出ることはあります。
しかし、急に発症した、痛みが非常に強い、夜も眠れない、明らかな外傷がないのに荷重できない、といった場合には、通常の変形性関節症以外の病態も考えます。
18.脆弱性骨折では夜も痛むことがあります
中高年以降で注意したいのが、膝の軟骨下脆弱性骨折(SIFK)です。
大きく転倒していなくても、関節面のすぐ下の骨に微小骨折が起こることがあります。
SIFKでは、急に膝が痛くなる、荷重で強く痛む、安静時にも痛む、夜間にも痛むことがあります。
さらに初期には単純レントゲンで異常が分からない場合があります。
そのため、中高年で突然強い膝痛が出て、レントゲンで大きな異常がなくても症状が強い場合には、MRIを検討します。
19.骨壊死も鑑別に入ります
骨の内部に問題が起きている場合にも、強い膝痛が出ることがあります。その一つが骨壊死です。
ただし、以前「特発性膝骨壊死」と呼ばれていた病態の中には、現在では軟骨下脆弱性骨折から進展した病態が含まれていると考えられています。
そのため現在は、軟骨下脆弱性骨折、骨壊死、その他の骨病変を画像所見などから区別して評価します。MRIが重要になる場面です。
20.発熱・赤み・強い腫れを伴う場合
膝が痛いだけでなく、明らかに赤い、熱を持っている、大きく腫れている、発熱している、急激に動かせなくなったという場合には、強い炎症を考えます。
感染性関節炎や結晶誘発性関節炎なども鑑別が必要です。
このような熱く腫れた関節は、一般的な変形性関節症として様子を見るべき症状ではありません。
21.夜間痛では腫瘍性病変も忘れない
頻度は高くありませんが、整形外科診療では腫瘍性病変を忘れてはいけません。
特に、安静にしていても強く痛む、夜間痛が続く、痛みが徐々に強くなる、原因の分からない腫れがある、通常の膝疾患として説明しにくい、といった場合には、骨・軟部腫瘍も鑑別に入ります。
夜間痛だけで腫瘍と判断するわけではありませんが、通常の荷重時痛とは違う痛み方には注意が必要です。
22.「どんな時に痛いか」だけでは診断できません
患者さんから、「階段で痛いから半月板ですか?」「立ち上がると痛いから変形性膝関節症ですか?」と聞かれることがあります。
しかし、動作だけで診断することはできません。
ごうだ整形外科では、まず患者さんに痛む場所を確認します。
ただ、患者さん自身は「膝全部が痛い」と表現することも少なくありません。
その場合には、医師が実際に、内側関節裂隙、外側関節裂隙、膝蓋大腿関節、膝蓋腱、膝後方などを触り、どこに圧痛があるかを探します。
23.腫れ方も診断の手がかりです
膝が腫れている場合にも、何が原因で腫れているかを考えます。
関節全体に炎症が起きる滑膜炎と、関節内に水が多くたまった関節水腫では、診察時の触れ方が異なることがあります。
水が多くたまっている場合には、液体の波動を触れることがあります。
また、熱感、発赤、腫れの場所も確認します。
24.曲げ伸ばしと不安定性も確認します
次に膝を実際に動かします。
見るのは、最後まで伸びるか、どこまで曲がるか、曲げている途中で痛むかです。
さらに、内反・外反方向、前後方向の不安定性を確認します。
外傷歴があれば、靱帯損傷も考えます。必要に応じてMcMurrayテストなどの徒手検査も行います。
25.年齢だけで診断を決めない
年齢も大切な情報です。
通常、若い方で加齢性の変形性膝関節症が高度に進行していることは多くありません。
しかし、「若いから変形性膝関節症ではない」とも言い切れません。
10代に半月板損傷、十字靱帯損傷、大きな膝外傷などを経験していれば、若い年齢でも二次性に変形が進むことがあります。
したがって、年齢と外傷歴は必ずセットで確認します。
26.レントゲンと診察を照らし合わせます
診察だけでなく、レントゲン所見も重要です。
ただし、K-001でも解説したように、画像だけを見て診断を決めるわけではありません。
痛む場所、症状が出る動作、圧痛、可動域、腫れ、不安定性と、レントゲン所見が一致するかを確認します。
画像で強い変形があっても痛みが少ない患者さんもいます。反対に、レントゲンの変化が少なくても強く痛む患者さんもいます。
27.MRIを積極的に検討する場面
すべての膝痛にMRIを行うわけではありません。
しかし、半月板損傷を疑う、靱帯損傷を疑う、軟骨下脆弱性骨折を疑う、骨壊死など骨内部の病変を疑う、レントゲンでは説明できない強い痛みが続く、といった場合には、MRIが有用です。
特にSIFKは初期レントゲンで異常を捉えにくいため、MRIが早期診断で重要とされています。
K-002まとめ|「痛む動作」は膝からのメッセージです
患者さんが、「階段で痛い」「朝起きると痛い」「正座すると痛い」「走ったときだけ痛い」と教えてくれることは、診断の大切な情報です。
動作を知ることで、どの組織に、どの方向から、どの程度の力が加わったときに痛みが出ているのかを考えることができます。
しかし、同じ動作で痛む病気は一つではありません。
ごうだ整形外科では、痛む動作+痛む場所+腫れ・水腫+可動域+圧痛+不安定性+年齢・外傷歴+レントゲン・必要に応じてMRIを組み合わせて診断します。
「どんな時に痛いか」は診断の答えではなく、原因へ近づくための大切な入口です。
膝の動作時痛についてよくある質問
Q1.歩き始めだけ膝が痛いのは変形性膝関節症ですか?
変形性膝関節症でみられることがありますが、半月板や軟骨下骨など他の関節内病変でも荷重開始時に痛むことがあります。痛む場所や診察所見、画像を合わせて判断します。
Q2.階段を上ると痛い場合は何を考えますか?
膝蓋大腿関節、大腿四頭筋、膝蓋腱、変形性膝関節症などを考えます。どこに圧痛があるかを確認することが重要です。
Q3.階段を下りると痛い場合は半月板損傷ですか?
半月板病変も原因の一つですが、変形性膝関節症や膝蓋大腿関節痛などでも下りで痛むことがあります。動作だけで病名は決められません。
Q4.正座やしゃがみ込みで痛むのはなぜですか?
深く膝を曲げると膝蓋大腿関節や半月板後方、変形した関節面、膝後方の組織などに負荷が増えるためです。痛む場所によって考える病態が変わります。
Q5.長く歩くと膝が痛いのですが、腰が原因のこともありますか?
あります。膝そのものの病変でも長時間歩行で痛みますが、一定距離で下肢痛やしびれが出て休むと改善する場合には、腰部脊柱管狭窄症なども考えます。
Q6.走る時だけ痛む場合は運動を続けてもよいですか?
痛みの原因と程度によります。走行時だけ症状が出る場合でも、軟骨・半月板・膝蓋大腿関節・腱などの問題が隠れていることがあります。痛みを我慢して負荷を増やす前に原因を確認することが大切です。
Q7.夜に膝が痛むのは危険ですか?
夜間痛だけで重大な病気とは限りませんが、強い安静時痛、急な発症、荷重困難、発熱や腫れなどを伴う場合には、脆弱性骨折、炎症、骨壊死、腫瘍なども含めて評価します。
Q8.レントゲンが正常でもMRIを撮ることはありますか?
あります。半月板・靱帯損傷、軟骨下脆弱性骨折、骨壊死などは単純レントゲンだけでは十分に分からないことがあり、症状と診察所見に応じてMRIを検討します。
完成済み関連記事
- K-001「膝のどこが痛い?|痛む場所から考える原因」
- L-004「腰部脊柱管狭窄症とは?」
- L-013「整形外科医は腰痛をどう診断する?」
- L-014「腰痛の検査|レントゲン・MRI・CTで何がわかる?」
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における臨床経験・診察手順を一次情報として構成し、膝専門医としての見解を示すものではありません。
診断、動作時痛、膝蓋腱障害、軟骨下脆弱性骨折、骨壊死、画像検査などの医学的記述は、整形外科・スポーツ医学の標準的な文献・診療ガイドラインと照合して患者さん向けに編集しています。
特に、ジャンパー膝は膝蓋腱障害として整理し、軟骨下脆弱性骨折(SIFK)は初期の単純レントゲンで異常が明らかでない場合があること、旧来「特発性膝骨壊死」と呼ばれていた病態の一部はSIFKとの連続性が考えられていることを反映しています。
主な参考文献・学術資料
- NICE. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management (NG226).
- Bunt CW, Jonas CE, Chang JG. Knee Pain in Adults and Adolescents: The Initial Evaluation. Am Fam Physician. 2018;98(9):576-585.
- Ochi J, et al. Subchondral insufficiency fracture of the knee: review of current concepts and radiological differential diagnoses. Jpn J Radiol. 2022.
- Clinical literature on patellar tendinopathy (jumper’s knee) and load-related anterior knee pain.
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-002
記事名:どんな時に膝が痛い?|痛む動作から考える原因
掲載区分:後編/長時間歩行・走行・ジャンプ・ひねり・安静時痛・夜間痛
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定
