K-002 どんな時に膝が痛い?|痛む動作から考える原因
【前編】歩き始め・階段・立ち上がり・正座・しゃがみ込みで痛む場合
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
「膝が痛い」と言っても、痛みが出る場面は患者さんによって違います。
朝起きて最初の数歩だけ痛い方もいれば、階段を上ると痛い方、下りると痛い方、椅子から立ち上がるときに痛い方、深く膝を曲げたときだけ痛い方もいます。
整形外科では、「どこが痛いか」と同じくらい、「どんな動作で痛いか」も重要な診断の手がかりになります。
なぜなら、動作によって膝に加わる力や、使われる筋肉、圧迫される関節の場所が変わるからです。
ただし、「階段で痛いからこの病気」「立ち上がりで痛いから変形性膝関節症」と、動作だけで病名を決めることはできません。
ごうだ整形外科では、痛む動作、痛む場所、腫れ、関節水腫、可動域、圧痛、不安定性、外傷歴、年齢、レントゲンなどを組み合わせて原因を考えます。
1.歩き始めに膝が痛い
「立ち上がって最初の数歩が痛い」。これは膝痛の患者さんによくある訴えです。
座っている間は膝に大きな荷重がかかっていません。そこから立ち上がると、体重が一気に膝へ加わります。
そのため歩き始めの痛みでは、変形性膝関節症、半月板の変性や損傷、軟骨・軟骨下骨の問題など、荷重によって症状が出る膝関節内の病態を考えます。
特に中高年では、変形性膝関節症で「しばらく休んだ後の動き始めに痛い・こわばる」という症状がみられることがあります。
2.朝起きて最初の数歩が痛い
朝起きた直後も、長時間座ったあととよく似ています。
睡眠中は膝を大きく動かすことが少ないため、起床後の動き始めに関節の硬さを感じることがあります。
中高年以降では、「最初は痛いけれど、何回か曲げ伸ばししていると少し楽になる」という方もいます。
このような症状では、関節の硬さや変形性膝関節症などを考えます。
一方で、朝のこわばりが非常に長く続く、両膝だけでなく手指など複数の関節も腫れる、といった場合には、変形性関節症以外の炎症性疾患も考える必要があります。
3.長時間座ったあとに立つと痛い
映画館、会議、車の運転などで長く座ったあと、「立ち上がった瞬間に膝が痛い」という方もいます。
これには二つの要素があります。一つは、長時間動かしていなかった膝を動かし始めること。もう一つは、荷重がかかっていない状態から急に体重が加わることです。
そのため、変形性膝関節症、膝蓋大腿関節の問題、半月板など関節内構造の問題などを考えます。
特に膝蓋大腿関節痛では、長時間座位、階段、しゃがみ込み、椅子からの立ち上がりなどで痛みが誘発されることがあります。
4.椅子から立ち上がると痛い
椅子から立ち上がるには、膝に体重がかかるだけでなく、大腿四頭筋を使って膝を伸ばす必要があります。
そのため立ち上がりで痛む場合には、変形性膝関節症、半月板病変、膝蓋大腿関節、膝伸展機構など、複数の原因を考えます。
特に低い椅子から立ち上がるほど、膝は深く曲がった状態から大きな力を使う必要があります。
つまり、「立ち上がりで痛い」という情報だけではなく、どの高さから、膝のどこが痛むのかまで確認することが重要です。
5.車の乗り降りで膝が痛い
車の乗り降りで痛む方も少なくありません。
特に乗用車では、椅子より座面が低いことがあります。低い位置から立ち上がると、膝が深く曲がる、大腿四頭筋を強く使う、立ち上がる瞬間に荷重がかかるため、通常の椅子より膝への負担が大きくなることがあります。
また、車から身体をひねりながら出る場合には、膝へ回旋力が加わることもあります。
車の乗り降りで痛む場合には、立ち上がりの負荷と、ひねり動作の両方を考えます。
6.階段を上ると膝が痛い
階段を上るときには、大腿四頭筋を強く使って身体を持ち上げます。
さらに膝を曲げた状態で力を出すため、膝蓋骨と大腿骨の間にある膝蓋大腿関節にも負荷が加わります。
そのため階段を上るときの痛みでは、膝蓋大腿関節、大腿四頭筋、膝蓋腱、変形性膝関節症などを考えます。
ただし、階段痛は膝蓋大腿関節だけに特有の症状ではありません。どの場所が痛むのかを触診で確認することが重要です。
7.階段を下りると膝が痛い
「上りは大丈夫だけれど、下りが痛い」という患者さんもいます。
階段を下りるときは、自分の体重を受け止めながら膝が急に曲がらないよう、大腿四頭筋がブレーキのように働きます。
また、膝関節や膝蓋大腿関節にも大きな負荷が加わります。
そのため、変形性膝関節症、半月板病変、膝蓋大腿関節痛など、関節内の問題を考えます。
「階段を下りると痛い=半月板」などと一つの病名に結びつけることはできません。上り・下りともに、痛む場所や診察所見と組み合わせて判断します。
8.坂道を上る・下ると膝が痛い
坂道も階段と同じように、平地歩行より膝への負担が増えます。
上りでは大腿四頭筋などの膝伸展機構を使って身体を持ち上げます。
下りでは膝を安定させながら身体をゆっくり下降させる必要があり、大腿四頭筋が強く働きます。
さらに下りでは関節への荷重も大きくなるため、変形性膝関節症、膝蓋大腿関節、半月板病変などがあると症状が出ることがあります。
9.正座や深く膝を曲げると痛い
正座や深いしゃがみ込みでは、膝関節が強く曲がります。
膝を深く曲げることで、膝蓋大腿関節への圧力が増える、半月板、特に後方部分に負荷がかかる、変形した関節面同士が強く接触する、膝後方の組織が圧迫される、といったことが起こります。
そのため深屈曲時の痛みでは、変形性膝関節症、半月板損傷、膝蓋大腿関節障害、ベーカー嚢腫などを考えます。
K-001で解説したように、膝の前が痛いのか、関節裂隙が痛いのか、膝裏が痛いのかによって疑う病態が変わります。
10.しゃがむと膝が痛い
しゃがむ動作も、基本的には深く膝を曲げる動作です。
そのため正座と同じように、膝蓋大腿関節、半月板、変形性膝関節症、膝後方などへの負荷が増えます。
一方で、しゃがんだ状態から立ち上がるときには、大腿四頭筋や膝蓋腱への負荷も増えます。
したがって、「しゃがむときに痛いのか」「しゃがんだ状態から立つときに痛いのか」も分けて聞く必要があります。
前編まとめ|動作を見ると「膝のどこに力がかかっているか」が分かります
K-002で大切なのは、動作そのものから病名を決めることではありません。
歩き始めなのか、階段なのか、深く曲げたときなのか、立ち上がりなのか。
どの動作で痛むかによって、膝のどの部分に負荷がかかっているのかを推測できます。
しかし最終的には、痛む場所+動作+診察所見+画像を組み合わせて診断します。
後編へ続く
【K-002 後編】長く歩く・走る・ジャンプ・ひねる・夜間痛|注意したい膝痛
後編では、長時間歩行、ランニング、ジャンプ、ひねり動作、寝返り、安静時痛・夜間痛から何を考えるのか、さらに腫れ・水腫・可動域・不安定性・年齢・外傷歴・レントゲン・MRIをどのように組み合わせて診断するのかを解説します。
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における臨床経験・診察手順を一次情報として構成し、膝専門医としての見解を示すものではありません。診断、動作時痛、画像検査に関する記述は、整形外科・スポーツ医学の標準的な文献・診療ガイドラインと照合して患者さん向けに編集しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-002
記事名:どんな時に膝が痛い?|痛む動作から考える原因
掲載区分:前編/歩き始め・階段・立ち上がり・正座・しゃがみ込み
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定
