014 腰痛の検査|レントゲン・MRI・CTで何がわかる?るポイント

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L-014 腰痛の検査|レントゲン・MRI・CTで何がわかる?

【前編】腰のレントゲンで何がわかる?整形外科医が実際に見ているポイント

監修/合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

腰痛で整形外科を受診すると、多くの場合、最初に行われる画像検査がレントゲンです。

患者さんの中には、

「レントゲンを撮れば腰痛の原因が全部わかるのでは?」

と思われている方もいるかもしれません。

しかし、レントゲンにはよくわかるものと、ほとんどわからないものがあります。

レントゲンが特に得意なのは、骨の形や並び、骨折、変形、すべりなどを見ることです。

一方、椎間板、神経、筋肉、靱帯などの軟部組織は、レントゲンだけでは十分に評価できません。

そのため腰痛の画像診断では、

「まずレントゲンで骨と全体像を確認し、必要であればMRIなど次の検査へ進む」

という考え方が重要です。

当院では、腰椎のレントゲンをただ「腰の骨を見る写真」とは考えていません。

腰椎の並びだけではなく、股関節、腹部の軟部組織、大動脈など、画像に写っている範囲全体を見ることを大切にしています。


1.腰椎レントゲンには「見る順番」があります

腰椎のレントゲンを読むとき、当院では毎回ある程度決まった順番で確認します。

基本となるのは、

正面像

側面像

斜位像

という流れです。

画像を何となく眺めて異常を探すのではなく、一定の順番で確認することで、見落としを減らしていきます。

正面像、側面像、斜位像では、それぞれ見えやすい場所が異なります。

複数の方向から腰椎を見ることで、立体的な骨の構造を頭の中で組み立てながら診断していきます。


2.正面像では、まず腰椎全体の「並び」を見ます

正面像で最初に見るのは、腰椎全体のアライメント、つまり骨の並び方です。

正常な腰椎がどのように並んでいるかを確認しながら、

などを確認します。

特に圧迫骨折などでは、椎体の高さや形が変化していることがあります。

ただし、発症して間もない圧迫骨折では、レントゲンだけでは明らかな椎体のつぶれが確認できない場合もあります。

診察では骨折を強く疑うのにレントゲンでははっきりしない場合には、MRIなどでさらに確認することがあります。


3.当院では腰の正面写真に股関節まで入るように撮影します

当院では腰椎の正面レントゲンを撮影するとき、股関節まで画像に入るように撮影しています。

なぜ腰痛なのに股関節まで見るのでしょうか。

実際の診療では、

「腰が痛い」 「お尻が痛い」

と訴えて受診した患者さんの中に、股関節の病気が隠れていることがあるからです。

患者さん自身が感じている「腰」や「お尻」という場所と、本当の痛みの発生源が必ずしも一致するとは限りません。

そのため、腰椎だけが写る範囲に限定するのではなく、股関節まで確認することで、

「本当に腰椎から来ている痛みなのか、それとも股関節が関係しているのか」

を考える材料にします。

腰痛を診断するときには、腰だけを見るのではなく、その周囲まで含めて考えることが重要です。


4.腰のレントゲンでも、骨だけを見るわけではありません

レントゲンを見るときには、腰椎だけに目を向けるのではなく、画像に写っているものをできるだけ広く確認します。

正面像では、例えば腸腰筋陰影も確認します。

腸腰筋は腰椎の両側から骨盤に向かって走る大きな筋肉です。

通常みられる陰影に左右差がないか、輪郭に不自然な変化がないかなども、画像を見る際の情報になります。

さらに、腹部のガス像も確認します。

腸管のガスがどのように分布しているか、通常とは異なる所見がないかを見ることがあります。

状況によっては、腸閉塞などを疑う手がかりとなるニボー(鏡面像)などが認められることもあります。

腰痛の患者さんだからといって、

「腰の骨以外は見なくてよい」

ということではありません。

画像の中に説明できない異常があれば、腰椎以外の病気についても考える必要があります。


5.正面像では「椎弓根」も確認します

腰椎の正面像では、椎弓根という部分も重要です。

正常では左右の椎弓根がある程度対称に確認できます。

ところが、一方の椎弓根が不明瞭になったり、消失して見えたりすることがあります。

このような所見では、骨を破壊する病変がないか注意する必要があります。

悪性腫瘍の骨転移などでみられることがあり、古くからwinking owl sign(ウインキング・オウル・サイン)」と呼ばれている所見があります。

ただし、レントゲンの一つの所見だけで「がん」と診断するわけではありません。

異常を疑った場合には、患者さんの既往歴や症状を確認し、MRIやCTなど必要な追加検査につなげます。


6.側面像では、腰椎の「前後の形」を見ます

次に側面像を確認します。

側面像では、正面からでは分かりにくい腰椎の前後方向の形や並びを見ることができます。

主に確認するのは、

といった点です。


腰椎の前弯を見る

正常な腰椎は、横から見ると適度に前方へ弯曲しています。

これを腰椎前弯といいます。

この弯曲が大きく変化していないか、極端な後弯になっていないかなど、腰椎全体のバランスを確認します。


椎間板の「幅」を見る

椎間板そのものは、通常のレントゲンに直接写るわけではありません。

しかし、椎体と椎体の間隔を見ることで、椎間板の高さが保たれているかを間接的に推測することができます。

椎間板の変性などが進むと、椎体間の幅が狭くなって見える場合があります。

つまり、

レントゲンでは椎間板そのものは見えなくても、椎間板が存在している「すき間」から情報を得ることができます。


すべり症を見る

側面像では、上下の腰椎の位置関係も確認します。

椎体が前後方向へずれている場合には、腰椎すべり症などを考えます。

ただし、レントゲンで「すべり」が確認されたからといって、それが必ず現在の腰痛の原因とは限りません。

画像所見と患者さんの症状が一致しているかを確認することが重要です。


7.側面像では腹部大動脈も見ています

腰椎の側面像には、背骨の前を走っている腹部大動脈が写ることがあります。

特に動脈壁に石灰化がある場合などには、その輪郭がレントゲンで確認できることがあります。

その中から、腹部大動脈瘤を疑うような所見が偶然見つかることもあります。

腰痛の患者さんの中には、整形外科疾患ではなく、大動脈などの血管疾患によって腰や背中に痛みを感じている方がまれにいます。

そのため、

「腰椎の側面写真だから腰椎だけを見る」

のではなく、大動脈を含めて画像全体を確認することが重要です。

もちろん、単純レントゲンだけで大動脈瘤や大動脈解離を確定診断することはできません。

疑わしい所見や症状がある場合には、CTなど適切な検査が必要になります。

特に突然発症した非常に強い腰痛などでは、整形外科的な腰痛と決めつけないことが大切です。


8.斜位像では「斜めからしか見えにくい場所」を確認します

次に斜位像です。

腰椎を斜め方向から撮影することで、正面像や側面像とは違った骨の構造を見ることができます。

当院では主に、

を確認します。


椎間関節を見る

椎間関節は、上下の腰椎をつないでいる関節です。

腰痛の原因は椎間板や神経だけではありません。

椎間関節の変形や負担が、腰痛に関係していることもあります。

斜位像では、この椎間関節の状態を正面・側面とは異なる角度から確認できます。


腰椎分離症を見る

腰椎分離症では、腰椎後方の骨の一部に連続性が失われている部分があります。

特に若い頃からスポーツを行ってきた患者さんなどでは、腰痛の原因を考える際に確認することがあります。

斜位像では、こうした骨の連続性を確認する手がかりになります。

必要に応じて、MRIなど他の画像検査と合わせて評価します。


椎間孔を見る

神経は脊柱管から椎間孔という出口を通って外へ出ていきます。

そのため椎間孔が狭くなれば、神経症状に関係することがあります。

レントゲンから分かるのは主に骨の形による情報であり、実際に神経がどの程度圧迫されているのかを詳しく見るためにはMRIが必要になります。


9.レントゲンで「わかること」と「わからないこと」

腰痛診療では、レントゲンだけですべての原因を診断することはできません。

大きく分けると、次のようになります。

レントゲンで評価しやすいもの レントゲンでは評価しにくいもの
骨の形・並び 神経
側弯 椎間板そのもの
骨折・椎体圧潰 椎間板ヘルニア
腰椎すべり症 筋肉
椎体間の高さ 靱帯
骨の変形 黄色靱帯肥厚
分離症などの骨性変化 軟部組織による神経圧迫
一部の腫瘍性骨変化 膿瘍などの軟部組織病変

レントゲンに写らないからといって、そこに病気がないという意味ではありません。


10.椎間板ヘルニアはレントゲンだけでは診断できません

患者さんから、

「レントゲンでヘルニアはありますか?」

と聞かれることがあります。

しかし、椎間板ヘルニアそのものは、通常のレントゲンでは十分に確認できません。

レントゲンでは骨の間隔などから椎間板の変性を推測することはできますが、

椎間板がどの方向へ突出しているのか
神経に触れているのか
どの神経をどの程度圧迫しているのか

までは分かりません。

これらを確認するためにはMRIが非常に重要になります。


11.脊柱管狭窄症もレントゲンだけでは分からないことがあります

脊柱管狭窄症についても同じです。

レントゲンでは骨の形から脊柱管が狭くなっている可能性を推測できることがあります。

しかし、実際の脊柱管の中には、

などがあります。

例えば、

といった状態はレントゲンだけでは十分に評価できません。

そのため、歩くと足が痛む・しびれるなど、脊柱管狭窄症を疑う症状がある場合には、診察所見と合わせてMRIを検討します。


12.レントゲンが正常でも「何もない」とは限りません

これは腰痛の画像検査を理解するうえで、とても重要です。

レントゲンで大きな異常が認められなくても、

などが隠れていることがあります。

つまり、

「レントゲンで異常なし」=「腰痛の原因が何もない」

ではありません。

患者さんの症状、身体診察、神経所見などを確認し、必要であれば次の画像検査へ進みます。


前編まとめ|レントゲンは「腰痛のすべてを見る検査」ではありません

腰痛診療におけるレントゲンは非常に重要な検査です。

しかし、その役割を正しく理解する必要があります。

レントゲンでは、

骨の形、並び、骨折、変形、すべりなどを確認すること

が得意です。

一方で、

神経、椎間板、筋肉、靱帯などを見ることは苦手です。

また当院では、腰椎だけを見るのではなく、

にも注意しています。

腰痛の原因は必ずしも背骨だけにあるとは限らないからです。

そしてレントゲンだけでは患者さんの症状を十分に説明できない場合に、次の検査として重要になるのがMRIです。


中編へ続く
【L-014 中編】MRIで何がわかる?

中編では、

  • で椎間板や神経がどのように見えるのか
  • では最初にどこを見るのか
  • テスラMRIと札幌の0.3テスラ・オープン型MRIの違い
  • を撮れない・撮りにくい場合
  • に横になれない場合
  • はどんなときに使うのか

について詳しく解説します。