財界さっぽろ連載記事第4回

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整形外科と新型コロナの世界 第4回

今回は新型コロナウイルスの話から少し離れて、整形外科保存治療のトピックスについて述べたいと思います。整形外科の治療には手術を行う観血的治療と手術以外の治療である保存的治療があります。外来に受診される多くの患者様は腰痛か関節痛です。今回は関節痛の保存的治療について説明します。関節痛は変形性関節症に代表される変性疾患と外傷に大別されます。変形性関節症の手術は人工関節が代表的なものです。保存的治療は投薬、リハビリ、関節注射、装具治療などです。それぞれの治療については多くの解説書が出ています。

 最近の変形性関節症の保存治療のトピックは多血小板血漿治療(PRP)治療があります。人の血小板の中には組織を修復する機能の高い増殖因子が含まれており、それを抽出して関節にもどすのがPRP治療です。アメリカの研究ではヒアルロン酸注射よりも効果高いことが報告されました。いくつかの方法があります。血液を採取し、遠心分離機で直接PRPを作成する方法と血液から増殖因子を単離し関節にもどすPRP―FD治療が代表的なものです。しかし、日本では保険適応となっていないため自費診療となります。施設により値段に幅がありますが概ね15万から50万の自己負担が発生します。また、実施には再生医療法の認可を取得する必要があります。認可は1年ごとに更新が必要であり数百万の更新手続き費用が発生します。採取器具が高価なことに加え、認可更新の手数料が高額なことが普及の妨げとなっていますが、自分の血液からつくる治療であり副作用がないことも大きな利点です。関節治療のみならず腱や靱帯、骨折、神経損傷にも効果が期待できます。また、美容外科ではしわの治療や瘢痕の治療、薄毛の治療にも応用されています。当院では従来治療方法のなかったヘバーデン結節に応用し良好な成績を得ています。テニス肘などの腱付着部炎にも劇的な効果が期待できる治療です。