指の関節について患者さんに説明する合田医師のイラスト

ヘバーデン結節とブシャール結節 原因と治療の考え方

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カテゴリー: 未分類

指の痛みや変形を年齢のせいと諦める前に

監修:合田猛俊、佐々木拓郎、清藤直樹

指の関節がふくらんできた、物をつまむと痛い、以前より曲げにくい。ヘバーデン結節やブシャール結節では、こうした症状がみられます。年齢とともに起こりやすくなる病気ですが、「年だから、もうどうしようもない」と諦める必要はありません。

治療では、痛みを和らげ、日常生活で手を使いやすくすることを目指します。一方で、痛みが軽くなることと、すでに生じた変形が元に戻ることは別です。原因や関節リウマチとの違いを知り、期待できることと治療の限界を確かめながら、自分に合う方法を相談しましょう。

1 ヘバーデン結節とブシャール結節の違い

人さし指から小指では、爪に近い第1関節をDIP関節、その一つ手前の第2関節をPIP関節と呼びます。変形性関節症に伴って第1関節がこぶのようにふくらむものがヘバーデン結節、第2関節に同様の変化がみられるものがブシャール結節です。[1]

痛みや腫れだけでなく、動かしにくさや変形が気になることもあります。ただし、症状の強さや進み方には個人差があり、すべての指が強く変形していくとは限りません。見た目の変化と、痛みの程度が同じように進むわけでもありません。[1、5]

経過の中で痛みが落ち着いても、関節のふくらみや変形が残ることがあります。一方で、痛みやこわばりが長く続いたり、別の指が気になってきたりする方もいます。「変形が完成すれば必ず痛みが消える」とは言い切れません。痛みや使いにくさが続くときは、我慢せずに相談してください。

親指の付け根が痛む「母指CM関節症」は、これらとは場所が異なります。手指の変形性関節症という共通点はありますが、治療や研究結果を考えるときには、どの関節の話なのかを分ける必要があります。[2]

2 原因は一つではなく遺伝的ななりやすさも関係します

発症の仕組みは、すべてが解明されているわけではありません。中年以降の女性に多く、年齢や関節への負担、体質など、複数の要因が関係すると考えられています。手をよく使う人に起こりやすい傾向はありますが、使い方だけで原因を説明できる病気ではありません。[1、3]

「母にもあるので、自分も同じようになりますか」と心配されるかもしれません。手指の変形性関節症では、遺伝子の違いとなりやすさの関連が研究され、双子を対象とした研究でも遺伝的ななりやすさの関与が示されています。ただし、これらは「母親にあると何%の確率で子どもにも起こる」と予測するものではありません。家族にあるからといって、必ず発症したり、同じ程度の変形になったりするわけではありません。[3、13]

年齢や手の使い方、家族の指の状態だけで、ご自身の将来を決めつける必要はありません。手を使ってきた自分を責めず、いま困っている症状への対処を考えましょう。[1]

原因が一つに決まらなくても、今ある痛みや生活上の困りごとに対処することはできます。

3 関節リウマチとは異なりますが場所だけでは判断できません

ヘバーデン結節とブシャール結節は、変形性関節症に伴う変化です。関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気で、治療の考え方が異なります。[1、4]

関節リウマチでは、指の付け根や第2関節、手首などに腫れがみられ、朝のこわばりが続くことがあります。第1関節に症状が出ることは比較的少ないものの、「第1関節だからリウマチではない」「第2関節の腫れはブシャール結節」と、場所だけで決めることはできません。[2、4]

診断では、いつからどの関節が痛むか、腫れ方やこわばり、診察と画像検査の結果を合わせて考えます。関節リウマチが疑われれば血液検査などを追加します。リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性というだけで診断は決まらず、陰性でも関節リウマチのことがあります。[4]

自己判断で様子を見続けず、気になる症状があれば相談してください。受診を考える目安は、最後の章にまとめています。

4 痛みを軽くして手を使いやすくする方法があります

治療は、痛む関節と生活上の支障に合わせて選びます。基本になるのは、関節への負担を減らす工夫、必要に応じた装具や薬、症状に合わせた運動です。どの方法も一律に行うのではなく、効果と負担を確かめながら調整します。[5、6]

痛む動作と休ませ方を見直します

痛みを強める作業を続けず、作業の区切り方や道具の使い方を工夫します。力を入れにくいときには、持ち手の太い道具やふたを開ける補助具などが役立つことがあります。強く痛む時期には一時的な安静や固定を検討しますが、長く動かさないままにするのがよいとは限りません。[1、5]

テーピングや装具は、痛む場所や皮膚の状態に合わせて使います。運動も、痛みを我慢して強く握り込むのではなく、無理なく動かせる範囲や量を確認してください。装具の装着時間や運動回数を、全員に同じように決めることはできません。[5、6]

薬や注射は症状と体の状態に合わせて考えます

痛み止めの塗り薬などの外用薬や、必要に応じた飲み薬を使うことがあります。飲み薬は、胃腸や腎臓などへの影響、持病や併用薬を考えて選びます。薬だけで変形そのものを元に戻すことを目的とするわけではありません。[5、6]

痛みや炎症のある指の関節では、ステロイド注射を検討することもあります。ただし、すべての関節へ一律に繰り返す治療ではなく、必要性やリスクを個別に判断します。注射の種類や間隔は自己判断せず、期待できる改善と注意点を確認しましょう。[5、6]

エクオールについて分かっていること

エクオールを含むサプリメントについて尋ねられることがあります。2025年には、手指の痛みがある45〜60歳の日本人女性のうち、体内でエクオールを産生しない方を対象とした12週間の研究で、服用前に比べて痛みなどの改善が報告されました。ただし、服用しない人やプラセボを飲む人との比較はなく、自然な経過や期待の影響と区別できません。エクオールによって症状が改善するか、変形を防げるかは、さらに確かめる必要があります。[14]

サプリメントであることは、安全性や効果を保証するものではありません。希望する場合は、持病や服用中の薬、製品の内容を医師・薬剤師と確認し、効果や負担をみながら相談しましょう。痛みや腫れが続くときに、サプリメントだけで様子を見続けないことも大切です。

生活への支障が続くときは手術も含めて相談します

保存的な治療で痛みが十分に軽くならず、日常生活への支障が続くときには、手術を検討する場合があります。例えば関節固定術は、痛む関節を固定する代わりに、その関節を曲げ伸ばしできなくなる方法です。どの関節をどのように治療するかによって得られることと不便になることが異なるため、手外科などで具体的に相談します。[1、5]

5 PRPや血管に着目した治療の現状

PRPや加工製品について

PRPは、自分の血液から血小板を多く含む成分を取り出して用いる治療です。ヘバーデン結節でも痛みや手の使いやすさの改善を示唆する報告がありますが、3人を対象とした小規模な報告です。治療を受けなかった人など、効果を比べる相手(比較群)がいないため、効果や安全性を広く確かめられた段階とは言えません。[7]

親指の付け根の変形性関節症では、2025年の比較試験で、単回のPRP注射と生理食塩水の注射を比べています。研究で主な判定項目にした痛みの尺度では、6か月後にPRPのほうがよく改善するとは確認されませんでした。この試験もヘバーデン結節やブシャール結節を対象にしたものではありません。研究は、対象の関節、製剤、投与方法ごとに読む必要があります。[8]

また、PRPの研究結果を、そのままPRP-FD(血小板由来の成分を凍結乾燥した製品)などの加工製品に当てはめることはできません。幹細胞培養上清液もPRPとは別のものです。含まれる成分やその濃度が違うという情報だけでは、患者さんの痛みにどちらがよく効くかは判断できません。製品ごとの臨床成績と安全性を確認する必要があります。[9、10]

現時点で確認できた研究から、これらの治療で「変形が元に戻る」「まだ痛くない関節の変形を予防できる」「粘液嚢腫が治る」といった効果が確立しているとは言えません。検討する際は、分かっていることだけでなく、効果が不十分な可能性、注射後の痛みや腫れ、感染などのリスク、費用、ほかの治療法も確認してください。[7〜10]

血管に着目した治療について

「モヤモヤ血管への治療」と案内される、異常な血管の増生に着目した血管内治療や動注治療も研究されています。手指の変形性関節症で痛みの改善を報告した研究はありますが、主に比較群のない研究であり、効果と安全性の検証がなお必要です。[11、12]

手技や使用する物質によって内容は異なります。血流の低下による組織への影響などにも注意が必要で、小規模研究で壊死がなかったことは、起こらないという保証にはなりません。受ける場合には、具体的な方法とリスク、ほかの選択肢について説明を受けてください。[12]

6 爪の近くの水ぶくれは自分で潰さないでください

第1関節や爪の根元に、透き通った水ぶくれのようなものができることがあります。「粘液嚢腫」と呼ばれるものの可能性がありますが、見た目だけで診断はできません。[2]

皮膚が破れると、細菌が関節の中に入るおそれがあります。針を刺したり、押し潰したりせず、医療機関で相談してください。赤みや痛みが増している、液が出ているなどの変化があれば、早めの受診が必要です。[2]

7 年齢のせいと諦めず困っていることを相談してください

手指の悩みを話す患者さんの話に耳を傾ける合田医師のイラスト

変形があることと、痛みを我慢し続けなければならないことは同じではありません。瓶のふたを開けにくい、調理や仕事で指が痛むなど、生活のどこで困っているかを伝えてください。

一度で必ずよくなる方法や、将来の変形を確実に防ぐ方法を約束することはできません。それでも、診断を確かめ、負担の減らし方や治療を見直すことで、痛みや使いにくさに対処する道はあります。痛みが軽くても、指の形が変わったことをつらく感じる場合があります。見た目への不安も遠慮なくお話しください。治療で改善を目指せることと、難しいことを分けて相談しましょう。

こんなときは相談してください

痛みや使いにくさが続くときは、我慢せずに相談してください。特に、次のような変化があるときは、自己判断で様子を見続けないことが大切です。

  • 複数の関節が腫れる、朝のこわばりが続く、手首やほかの関節にも症状がある。[4]
  • 爪の近くの水ぶくれで、赤みや痛みが増す、液が出るなどの変化がある。この場合は早めに受診してください。[2]

合田より

毎日の暮らしや仕事を支えてきた、ご自身の手です。変形を恥ずかしく思ったり、ご自分を責めたりする必要はありません。私は、これまで頑張ってきた手をいたわりながら、これからも使いやすくしていく方法を一緒に考えたいと思っています。痛みだけでなく、指の形への気持ちもお聞かせください。

よくある質問

Q 母にも結節がありますが遺伝するのでしょうか

遺伝的ななりやすさの関与は研究されています。ただし、家族にあるから必ず発症する、同じように変形するというわけではありません。遺伝だけで決まる病気とは考えず、ご自身の痛みや腫れ、使いにくさに合わせて相談してください。[1、3]

Q 痛みがなくなれば変形も元に戻りますか

痛みの改善と、骨や関節の形の変化は分けて考えます。痛みが落ち着いても、ふくらみや変形が残ることがあります。治療で何を改善したいかを、痛み、手の使いやすさ、見た目に分けて確認しましょう。[1、5]

Q PRPなどを早く受ければほかの指の変形を予防できますか

無症状の指へ注射すれば将来の変形を防げる、という効果は、今回確認できた臨床研究では確立していません。治療を行う目的と、根拠のある効果、まだ分かっていないことを分けて説明を受けることが大切です。[7、8]

監修者プロフィール

合田猛俊

医療法人社団GOZEN 理事長

整形外科専門医、医学博士

佐々木拓郎

北7条ごうだ整形外科 院長

整形外科専門医、医学博士、産業医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

清藤直樹

岩見沢ごうだ整形外科 院長

整形外科専門医、医学博士、日本人工関節学会認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

記事情報

本記事は一般的な医療情報を紹介するもので、個別の診断や治療を決めるものではありません。症状に応じて医師にご相談ください。

参考文献

[1]日本整形外科学会 症状・病気をしらべる ヘバーデン結節

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/heberden_nodes.html

[2]日本手外科学会 手外科Q&A Q8、Q12、Q13、Q17

https://www.jssh.or.jp/ippan/what_tegeka/tegekaqa.html

[3]Styrkarsdottir U, et al. Severe osteoarthritis of the hand associates with common variants within the ALDH1A2 gene and with rare variants at 1p31. Nature Genetics. 2014;46:498–502. DOI 10.1038/ng.2957.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24728293/

[4]日本リウマチ学会 関節リウマチ 2025年8月1日更新

https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/kansetsu-riumachi/

[5]Kloppenburg M, et al. 2018 update of the EULAR recommendations for the management of hand osteoarthritis. Annals of the Rheumatic Diseases. 2019;78:16–24. DOI 10.1136/annrheumdis-2018-213826.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30154087/

[6]American College of Rheumatology. 2026 Update of the American College of Rheumatology Recommendations for the Management of Osteoarthritis of the Knee, Hip, and Hand. 2026年9月公開の更新要約。

https://assets.contentstack.io/v3/assets/bltee37abb6b278ab2c/bltb3d12c34020da842/oa-guideline-summary-2026.pdf

[7]小曽根和毅ほか Heberden結節に対する関節内多血小板血漿注射の小経験 日本手外科学会雑誌 2025;42(3):386–391. DOI 10.60304/jjssh.42.3_386. 公開抄録を確認。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjssh/42/3/42_386/_article/-char/ja

[8]Evans K, et al. Platelet-Rich Plasma Injection for Painful Trapeziometacarpal Osteoarthritis: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Trial. JBJS Open Access. 2025;10(2):e25.00027. DOI 10.2106/JBJS.OA.25.00027.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12136674/

[9]日本再生医療学会 細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス 第1版 2024年4月30日

https://www.jsrm.jp/cms/uploads/2024/05/news14993-2.pdf

[10]Nakajima R, et al. Comparison of bioactive substances in novel-developed freeze-dried platelet-rich plasma (PRP) and activated normal PRP, and investigation of bioactive substance levels after long-term storage. Regenerative Therapy. 2024;27:200–206. DOI 10.1016/j.reth.2024.03.021. 製法と成分の分析であり、手指の臨床効果を比較した研究ではありません。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10990710/

[11]Kubo T, et al. Intra-Arterial Injection of Temporary Embolic Material Through a Needle Inserted into the Radial or Ulnar Artery for Distal and Proximal Interphalangeal Joint Osteoarthritis: A Retrospective Study of 92 Patients. Cardiovascular and Interventional Radiology. 2023;46:1375–1382. DOI 10.1007/s00270-023-03514-x.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37524895/

[12]Lee SY, et al. Short-term clinical outcomes of transarterial embolization for symptomatic hand osteoarthritis refractory to conservative treatment. Diagnostic and Interventional Radiology. 2024;30(1):65–71. DOI 10.4274/dir.2023.232350.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10773178/

[13]2022年 双生児研究 PubMed PMID 35843480

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35843480/

[14]Shimoe T, et al. 2025. エクオールのパイロット研究 PMID 40666269

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12263094/