K-007 膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?
【中編】リハビリ・運動・体重管理・装具・再生医療
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
膝痛は、注射をして痛みが軽くなれば治療終了、というものではありません。
変形性膝関節症では、筋力、可動域、体重、アライメント、日常生活での負荷なども症状に影響します。
そのため、ごうだ整形外科では薬・注射と並行してリハビリを行います。
10.リハビリでは大腿四頭筋を重視します
膝痛のリハビリで特に重要な筋肉が大腿四頭筋です。膝を伸ばし、歩行時に身体を支える重要な筋肉です。
変形性膝関節症では、大腿四頭筋を中心とした筋力訓練と有酸素運動などの運動療法が治療の基本になります。
11.可動域訓練も同時に行います
筋力だけではなく、膝がどこまで伸びるか、曲がるかも重要です。膝が曲がったまま伸びなくなると、歩行にも影響します。
そのため、筋力訓練、膝の伸展訓練、屈曲可動域訓練を組み合わせます。股関節にも拘縮がある場合には、股関節の可動域や筋力も含めてリハビリを考えます。
12.痛みが強い時期でもできる筋力訓練があります
痛い膝を無理に深く曲げる必要はありません。
強い痛みがある場合には、等尺性運動のように、膝を大きく動かさず筋肉へ力を入れる方法があります。必要に応じてEMSなどの電気刺激を筋力訓練の補助として使用することもあります。
重要なのは、「痛いから何もしない」でも、「痛くても無理に曲げる」でもないことです。
13.ウォーキングは可能な範囲で続けます
膝が痛いからといって、歩くことをすべて禁止するわけではありません。
痛みが大きく悪化しない範囲でのウォーキングは、全身の体力維持や筋力維持にもつながります。
14.自転車も一律に禁止しません
自転車は体重をサドルへ預けながら膝を動かせるため、患者さんによっては行いやすい運動です。
サドルの高さなどによって膝の屈曲角度も変わります。痛みを誘発しない設定であれば、必ずしも禁止する必要はありません。
15.深いスクワットは勧めません
膝を深く曲げたスクワットでは、膝蓋大腿関節や脛骨大腿関節への負荷が大きくなります。
そのため、膝痛のある患者さんに「とにかく深くしゃがんで鍛えてください」とは指導しません。患者さんの病態・筋力・痛みに合わせて、深さと負荷を調整します。
16.体重管理も膝治療の一部です
過体重・肥満のある変形性膝関節症患者では、体重管理も重要です。
歩行時には膝へ体重以上の力が繰り返しかかるため、体重を減らすことで膝への負荷を減らすことができます。
過体重・肥満を伴うOAでは、減量によって疼痛や身体機能が改善することが知られています。
17.「痩せてください」だけでは治療になりません
膝が痛くて歩けない患者さんに、「運動して痩せてください」と言っても、実際には難しい場合があります。
そこでまず痛みを軽減し、必要に応じて医学的な体重管理も組み合わせながら、体重を減らす→膝痛を軽減する→動けるようになる→筋力を維持する、という流れを作ることが重要です。
肥満を伴う膝OAでは、薬物による体重管理が膝痛・身体機能の改善につながる可能性も報告されています。ただし、適応・副作用・栄養や筋量への配慮が必要で、全員に同じ治療を行うわけではありません。
18.足底板・サポーターを使うこともあります
内反変形などで荷重の偏りがある患者さんでは、足底板や装具を検討する場合があります。目的は、膝へかかる力の方向を調整することです。
ただし、すべての患者さんに一律に使うわけではありません。関節不安定性や異常な荷重があり、運動療法だけでは不十分な場合などに個別に検討します。
サポーターは安定性を補助する目的で使用することがありますが、常用だけに頼らず、同時に筋力訓練を続けることが重要です。
19.足底板とHTOは同じ治療ではありません
足底板も高位脛骨骨切り術(HTO)も、内側へ集中した荷重を外側へ移すという方向性には共通点があります。
しかし、治療効果・矯正力は同じではありません。HTOは骨を切って実際に下肢アライメントを変える手術であり、足底板は保存療法の一つです。
20.再生医療は「手術と保存療法の間」の選択肢として考えることがあります
ごうだ整形外科では自由診療として、PRP-FD(フリーズドライ製剤)と間葉系細胞培養上清液を選択肢として扱っています。
ただし、再生医療について最も大切なのは、「軟骨が元通り再生する治療」と説明しないことです。
21.PRP-FDをどう位置づける?
PRP系治療は、血小板由来の成分を利用して疼痛や炎症の改善を目指す治療です。
膝OAに対するPRPは、疼痛や機能を改善する可能性がある一方、製剤や患者選択によって結果にばらつきがあり、エビデンスの確実性は限定的です。
ごうだ整形外科では、ヒアルロン酸やリハビリだけでは十分な効果が得られない一方、すぐに手術へ進みたくない患者さんに対する中間的な選択肢として検討します。
22.進行した膝では再生医療だけで解決しないことがあります
変形が強く、関節裂隙が著しく狭い、アライメント異常が大きい、日常生活に大きな障害がある場合には、注射治療だけで十分な効果を得ることが難しいことがあります。
先生の臨床経験でも、比較的変形が軽い患者さんの方がPRP-FDの効果を実感しやすい傾向があります。
23.間葉系細胞培養上清液について
ごうだ整形外科では間葉系細胞培養上清液も自由診療の選択肢としています。
ただし、これは膝OAの標準治療として有効性・長期安全性が確立した治療とは言えません。研究が進んでいる一方、臨床的なエビデンスはまだ限定的です。
したがって、期待できる可能性と同時に、現在のエビデンスの限界も説明する必要があります。
24.半月板や靱帯が「注射で元通りになる」とは考えません
PRPや上清液を使用したからといって、切れた半月板が元通りになる、断裂した十字靱帯が完全に修復される、失われた軟骨が必ず再生する、と説明することはできません。
再生医療は万能な修復治療ではありません。症状改善を目的とした治療として、他の治療と組み合わせて位置づけます。
25.再生医療だけで終わらず、リハビリを続ける
再生医療を行ったから、「これで何もしなくていい」ということではありません。
筋力低下や可動域制限、体重、アライメントの問題があれば、それらは残ります。
そのため、再生医療+リハビリ+体重管理という形で治療を組み立てます。
中編まとめ|膝治療は「一つの治療」で完結しません
膝痛を改善するためには、注射だけ、薬だけ、筋トレだけ、減量だけでは不十分な患者さんがいます。
痛みを抑えながら、筋力・可動域・体重・アライメント・生活負荷を同時に改善していくことが重要です。
後編へ続く
【K-007 後編】いつ手術する?|HTO・UKA・TKAと治療のゴール
後編では、保存療法から手術へ進むタイミング、HTO・UKA・TKAの違い、手術を画像だけで決めない理由、高齢者の将来設計、人工関節手術の目標と限界について解説します。
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における運動療法・体重管理・装具・再生医療の実際と臨床経験を一次情報として構成しています。運動療法、減量、PRP、培養上清液などに関する医学的記述は、標準的なガイドライン・医学文献と照合し、現在のエビデンスの限界も含めて患者さん向けに編集しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-007
記事名:膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?
掲載区分:中編/リハビリ・運動・体重管理・装具・再生医療
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定
