K-008 膝痛を悪化させない生活|歩き方・階段・運動・体重管理
【後編】運動・体重・装具|膝を長く使うためにできること
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
膝を長く使うためには、痛みを避けるだけではなく、動ける範囲で身体機能を維持し、体重や生活環境も含めて整えていくことが大切です。
9.膝痛があっても「運動をやめる」必要はない
ごうだ整形外科では、「膝が悪いから、もう運動はやめましょう」という指導を基本とはしていません。
重要なのは、どの運動なら今の膝で続けられるかを考えることです。
運動は痛みを無視して行うものではありません。しかし、痛みを恐れて身体をまったく動かさなくなることも避ける必要があります。
10.ウォーキングは続けてよい
ウォーキングは変形性膝関節症の患者さんでも取り入れやすい運動です。痛みが強くならない範囲で、距離、速度、坂道の有無、休憩回数を調整します。
「毎日必ず○千歩」という数字だけを目標にする必要はありません。その日の膝の状態を見ながら続けることが大切です。
11.自転車は膝痛があっても行いやすい
自転車やエアロバイクは、体重をすべて膝で支え続ける必要がないため、歩行より取り入れやすい患者さんもいます。
ただし、サドルが低すぎると膝が深く曲がります。膝が痛い場合には、必要以上に深く曲げない高さに調整することも大切です。
12.大腿四頭筋を鍛えることは非常に重要
膝を支える代表的な筋肉が、太ももの前にある大腿四頭筋です。変形性膝関節症では、大腿四頭筋を中心とした筋力訓練が重要です。
ごうだ整形外科でも、膝痛のリハビリでは大腿四頭筋訓練を重視しています。痛みが強く大きく膝を動かせない場合には、膝を大きく曲げ伸ばしせずに力を入れる等尺性運動から始めることもできます。
13.スクワットは「深ければ深いほどよい」わけではない
スクワットは大腿四頭筋を鍛える有効な方法ですが、深くしゃがむほど膝への負荷も増えます。特に、お尻が床近くまで下がるような深いスクワットは、膝痛がある患者さんには勧めません。
ごうだ整形外科では、症状を確認しながら、膝が約90度程度までの範囲を一つの目安として行うことがあります。
ただし、「90度なら膝に負担がない」という意味ではありません。痛みがある患者さんでは、深さ、回数、速度、負荷を調整することが重要です。
14.水中歩行は膝への荷重を減らして運動できる
プールでの歩行は、浮力によって体重負荷を減らしながら運動できます。
「陸上では歩くと痛い」「体重が重く、運動を始めにくい」という患者さんにも選択肢になります。
15.スポーツも一律に禁止しない
ゴルフ、テニス、スキー、ウォーキングなど、長年続けてきたスポーツは生活の楽しみでもあります。
そのため、「膝が悪いから全部やめてください」と一律に指導する必要はありません。
ただしスポーツによって、切り返し、ジャンプ、急停止、深い屈曲、長時間の荷重など、膝への負担は異なります。
種目と膝の状態を確認して、「どうすれば続けられるのか」を考えることが大切です。
16.体重を減らすことは膝の治療の一つ
体重が増えると、歩行や階段など日常生活で膝にかかる負担も増えます。そのため、過体重や肥満を伴う変形性膝関節症では、体重管理は重要な治療の一つです。
体重を減らすことで、膝の疼痛や身体機能が改善することが報告されています。大切なのは、単に「痩せてください」と伝えるだけでなく、実際に続けられる方法を一緒に考えることです。
17.「痩せるために運動してください」だけでは難しい患者さんもいる
ここには大きな問題があります。膝が痛いから体重を減らしたいのに、膝が痛くて十分に運動できない患者さんがいるからです。
そのような場合に、「運動して痩せてください」だけでは治療にならないことがあります。
ごうだ整形外科では、肥満や体重増加が膝痛に関与している患者さんには、食事、運動だけでなく、適応がある場合には医師の管理下で行うメディカルダイエットを含めた体重管理も選択肢として考えています。
近年では、肥満を伴う変形性膝関節症患者を対象に、医学的な減量治療によって体重だけでなく膝痛や身体機能が改善した臨床試験も報告されています。
ただし、薬による肥満治療は誰にでも必要なものではなく、適応、副作用、栄養状態、筋肉量などを確認しながら行う必要があります。
18.杖は「弱くなった証拠」ではない
高齢の患者さんでは、「杖を持つと一気に年を取った気がする」と嫌がる方もいます。
しかし杖は、膝への負担を軽減するだけでなく、転倒予防や歩行の安定にも役立ちます。必要な時期に杖を使うことは、決して後ろ向きなことではありません。
19.サポーターは「補助」として使う
強い膝痛があるときには、サポーターによって安定感が得られたり、歩きやすくなったりする患者さんがいます。
一方で、ごうだ整形外科では、サポーターだけに頼り続けるのではなく、筋力訓練と組み合わせることを重視しています。
サポーターを使ったから必ず筋肉が萎縮する、と単純に考えるべきではありません。必要な時には利用しながら、自分自身の筋力も維持していくことが大切です。
20.足底板は全員に同じものを入れるわけではない
O脚が強く、荷重軸が内側へ偏っている場合には、足底板などを検討することがあります。
ただし、「O脚なら外側を高くすればよい」と単純には考えられません。足底板は、アライメント、痛みの場所、関節の変形、歩き方、足部の状態を確認したうえで、個別に判断することが重要です。
21.「年だから仕方がない」で終わらせない
変形性膝関節症の患者さんから、よく聞く言葉があります。
「前の病院で、年だから仕方ないと言われました」
しかし、ごうだ整形外科では、この言葉で診療を終わらせたくないと考えています。
もし年齢だけが原因で膝が変形するのであれば、同じ年齢になれば全員が同じように膝を変形するはずです。実際にはそうではありません。
膝の変形には、次のようなさまざまな要因が関係しています。
- アライメント
- 長年の仕事や生活
- スポーツ歴
- 過去の外傷
- 半月板や軟骨の状態
- 筋力
- 体重
22.「今まで頑張ってきた膝」と考える
私たちは患者さんに、次のように説明することがあります。
「今まで一生懸命使ってきた膝だから、少しずつ負担が積み重なって変化が出てきたのかもしれません」
変形があることは、患者さんの人生が間違っていたということではありません。
仕事をして、家族を支えて、スポーツをして、歩いてきた。その結果、今の膝があります。
だからこそ、今度はその膝をいたわりながら、どうすれば痛みを減らして使い続けられるのかを考える。それが整形外科の役割だと考えています。
23.大切なのは「なぜ痛いのか」を理解すること
「年だから」だけでは、治療につながりません。
一方、軟骨が傷んでいる、膝の荷重軸が偏っている、半月板が傷んでいる、筋力が低下している、体重が増えている、と原因が分かれば、次にできることが見えてきます。
筋力が弱ければリハビリをする。体重が負担になっていれば体重管理をする。炎症が強ければ炎症を抑える。保存治療で十分改善しなければ、再生医療や手術を含めて次の治療を考える。
原因を理解することが、治療のスタートです。
まとめ|膝を長く使うために
膝痛を悪化させないために最も重要なのは、「膝が痛いから何もしない」ことでも、「痛くても我慢して動く」ことでもありません。
自分の膝がなぜ痛むのかを理解して、次のようなことを続けることが大切です。
- 深く曲げる動作を減らす
- 自分に合った歩き方を覚える
- 無理のない範囲で歩く
- 大腿四頭筋を鍛える
- 体重を管理する
- 必要に応じて杖や装具を使う
- 症状が変われば再評価する
そして、「年だからしょうがない」で終わらせる必要はありません。
今まで頑張ってきた膝だからこそ、これからはその膝をいたわりながら、できるだけ長く自分の足で生活できる方法を一緒に考えていきましょう。
よくある質問
Q1.変形性膝関節症なら歩かない方がいいですか?
いいえ。痛みが強くならない範囲で歩くことは、筋力や身体機能を維持するためにも重要です。強い痛みや腫れが出る場合には距離や運動量を調整します。
Q2.正座はしてはいけませんか?
絶対禁止ではありませんが、正座で痛みが出る場合は無理に長時間続けない方がよいでしょう。
Q3.スクワットは膝に悪いですか?
適切な範囲で行えば大腿四頭筋訓練として有用です。膝痛がある場合は深くしゃがみ込み過ぎず、痛みに応じて深さや回数を調整します。
Q4.自転車は膝が痛くても乗れますか?
可能な患者さんは多くいます。サドルを低くしすぎると膝が深く曲がるため、適切な高さに調整してください。
Q5.膝は冷やした方がいいですか、温めた方がいいですか?
急性の腫れや熱感が強い場合には冷却が楽になることがあります。慢性的なこわばりや痛みでは、入浴などの温熱で楽になる方もいます。
Q6.体重を減らすと膝痛は改善しますか?
過体重・肥満を伴う変形性膝関節症では、減量によって疼痛や身体機能が改善することがあります。
Q7.サポーターは毎日使ってもよいですか?
必要な場合には有用ですが、サポーターだけに依存せず、筋力訓練などと組み合わせることが大切です。
Q8.年齢が高いと膝痛は治らないのでしょうか?
年齢だけで治療の可能性がなくなるわけではありません。痛みの原因を調べ、運動、体重管理、薬物療法、注射、リハビリ、必要に応じて手術などを組み合わせて治療します。
完成済み関連記事
- K-001「膝のどこが痛い?|痛む場所から考える原因」
- K-002「どんな時に膝が痛い?|歩く・階段・立ち上がり・正座・運動時」
- K-003「膝の痛みと一緒に現れる症状|腫れ・水・熱感・引っかかり・力が抜ける」
- K-004「この膝痛は受診すべき?|様子を見てもよい痛み・早めに受診したい痛み」
- K-005「整形外科医は膝痛をどう診断する?|問診・視診・触診・徒手検査」
- K-006「膝痛の検査|レントゲン・MRI・エコーで何がわかる?」
- K-007「膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?」
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における膝治療の実際と臨床経験を一次情報として構成しています。膝専門医としての専門的見解を示すものではありません。
医学的確認では、変形性膝関節症に対する運動療法と適切な体重管理が治療の中核であること、水中運動や自転車運動が症状に応じた運動手段となり得ること、杖や装具は患者さんによって有用なこと、一方で歩行方法の矯正や足底板は一律に勧めず個別に判断すべきことを、標準的な診療ガイドラインおよび臨床研究と照合しています。
主な確認資料:NICE Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management(NG226)、AAOS Management of Osteoarthritis of the Knee(Non-Arthroplasty)第3版、肥満を伴う膝変形性関節症の減量治療に関する臨床試験(STEP 9)など。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-008
記事名:膝痛を悪化させない生活|歩き方・階段・運動・体重管理
掲載区分:後編/運動・体重管理・装具・再発予防
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定
