K-007 膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?
【前編】まず痛みを取る|薬・湿布・ヒアルロン酸・関節内注射
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
膝が痛い患者さんに対して、「まず筋肉を鍛えましょう」「年齢だから仕方ありません」「痛み止めで様子を見ましょう」だけで治療が終わるわけではありません。
ごうだ整形外科では、変形性膝関節症や半月板損傷など病名にかかわらず、痛みが強ければ、まずその痛みを軽減することを重視しています。
ただし、単に痛み止めを処方するだけではありません。まず診察・レントゲン・必要に応じてMRIなどで、「なぜ痛いのか」をできるだけ明らかにし、その原因に合わせて薬、注射、リハビリ、装具、体重管理などを組み合わせていきます。
1.治療の第一歩は「なぜ痛いのか」を確認すること
同じ「膝が痛い」という症状でも、原因は患者さんによって異なります。
変形性膝関節症、半月板損傷、関節水腫、滑膜炎、軟骨障害、靱帯損傷、軟骨下骨の損傷などがあります。
そのため、「膝が痛いから全員同じ治療」ではありません。関節内の炎症が中心なのか、アライメント異常が大きいのか、筋力低下があるのかによって治療を変えます。
2.痛みが強ければ、積極的に痛みを抑えます
ごうだ整形外科では、「膝が痛いから、とにかく安静にしてください」だけで終わらせることは基本的にしません。
痛みが強いと、歩けない、運動できない、リハビリできない、筋力が低下する、さらに動けなくなるという悪循環に入りやすくなるからです。
そこで、薬や注射などで痛みをコントロールしながら、できるだけ身体を動かせる状態へ戻すことを目指します。
3.内服薬ではNSAIDsを使うことがあります
膝痛に使う代表的な薬が、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)です。炎症と痛みを抑える作用があり、膝痛の急性期などで使うことがあります。
ただしNSAIDsには、胃腸障害、腎機能への影響、心血管系への影響などがあります。特に高齢者や腎機能低下、消化管リスクのある患者さんでは慎重に判断します。
経口NSAIDsは有効な選択肢ですが、年齢や腎・消化管・心血管リスクを考慮し、必要最小限で使うことが大切です。
4.アセトアミノフェンを使うこともあります
NSAIDsを使いにくい患者さんなどでは、アセトアミノフェンを検討することがあります。
比較的使いやすい薬ですが、変形性膝関節症に対する鎮痛効果は強くないことがあります。
そのため、「安全そうだから全員アセトアミノフェン」という使い方ではありません。患者さんの年齢、持病、痛みの強さを考えて選びます。
5.湿布・塗り薬も治療の一つです
「湿布をください」という患者さんは非常に多くいます。
湿布や塗り薬にもNSAIDsなどの鎮痛成分を含むものがあります。局所へ使用できるため、膝OAでは外用NSAIDsが薬物治療の選択肢になります。
ただし、湿布では、かぶれ、発赤、かゆみなどの皮膚トラブルが出ることがあります。その場合には塗り薬へ変更するなど、患者さんに合わせて使い分けます。
6.「痛み止めを使うと、悪化していることに気づかないのでは?」
患者さんから、「痛み止めで痛みを消したら、悪い膝を使いすぎてしまいませんか?」と聞かれることがあります。
膝痛では、鎮痛薬を使うこと自体が病態を隠してしまうと考える必要は通常ありません。むしろ痛みを軽減し、歩く・生活する・リハビリを行うために使う意味があります。
ただし、薬で痛みを抑えながら無理な運動を続けるという意味ではありません。
7.関節内に原因があると考えたら注射を使うことがあります
変形性膝関節症などで関節内に痛みの原因がある場合には、関節内注射を行うことがあります。
ごうだ整形外科では、国内で保険診療として使用されるヒアルロン酸関節内注射を選択することがあります。
ただし、ヒアルロン酸については国際的なガイドライン間で評価に違いがあります。「誰にでも効く治療」とは考えず、患者さんごとに反応を見ながら使用することが大切です。
8.水腫・炎症が強いときにはステロイドを使うことがあります
初診時に、痛みが強い、関節水腫が強い、炎症が強い場合には、症状や病態を確認したうえで、関節内ステロイドを検討することがあります。
ごうだ整形外科では、初回に炎症や水腫が強い場合にヒアルロン酸と少量ステロイドを併用し、その後はヒアルロン酸単独で治療することがあります。
ステロイド関節内注射には短期的な疼痛軽減効果がありますが、繰り返し頻回に投与する薬ではありません。投与時期や回数は患者さんの状態を見て判断します。
9.局所麻酔薬を併用する場合
関節注射では局所麻酔薬を併用することもあります。
注射時の痛みを軽減したり、粘稠な製剤を注入しやすくしたりする目的があります。
一方、局所麻酔薬は薬剤・濃度・曝露時間によって軟骨への影響が議論されているため、漫然と関節内へ使用するものではありません。患者さんごとに必要性を判断します。
前編まとめ|「薬だけ」「注射だけ」で治療は終わりません
膝痛治療では、痛みの原因を診断する→薬や注射で痛みを軽減する→身体を動かしやすくする→筋力・可動域・体重・アライメントを改善する、という流れが大切です。
薬や注射は治療のゴールではありません。次の治療へ進むために痛みを減らす手段でもあります。
中編へ続く
【K-007 中編】リハビリ・運動・体重管理・装具・再生医療
中編では、大腿四頭筋を中心とした筋力訓練、可動域訓練、ウォーキング・自転車・スクワット、体重管理、足底板・サポーター、PRP-FD(フリーズドライ製剤)、間葉系細胞培養上清液の位置づけについて解説します。
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における膝治療の実際と臨床経験を一次情報として構成しています。薬物療法・関節内注射の医学的記述については標準的な整形外科・変形性関節症ガイドラインと照合し、患者さん向けに編集しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-007
記事名:膝痛の治療法|薬・注射・リハビリ・再生医療・手術をどう使い分ける?
掲載区分:前編/薬・湿布・ヒアルロン酸・関節内注射
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定
