K-003 膝の痛みと一緒に現れる症状
【前編】膝の腫れ・水・熱感|「水がたまる」とはどういうこと?
監修
合田 猛俊
佐々木 拓郎
清藤 直樹
膝が痛い患者さんの中には、「膝が腫れている」「水がたまっていると言われた」「膝が熱を持っている」「赤くなってきた」といった症状を伴う方がいます。
膝の腫れは、単に「水がたまっている」だけとは限りません。関節の中に液体が増えている場合もあれば、滑膜そのものが炎症を起こして腫れている場合、外傷によって血液がたまっている場合もあります。
さらに、赤く熱を持った膝では、偽痛風などの結晶性関節炎だけでなく、感染性関節炎を見逃さないことが非常に重要です。
K-003前編では、膝が腫れる原因と、関節に水がたまる意味について解説します。
1.膝全体が腫れているとき、まず何を見る?
膝が腫れている患者さんでは、最初に膝全体を見ます。
片膝だけか、両膝か。赤くなっていないか。熱を持っていないか。内出血がないか。急に腫れたのか、徐々に腫れてきたのか。こうした違いを確認します。
膝全体が腫れている場合には、何らかの炎症が起きている可能性を考えます。
ただし、「腫れている」という見た目だけでは原因は分かりません。変形性膝関節症、半月板損傷、関節リウマチ、結晶性関節炎、感染、外傷など、さまざまな病態で膝は腫れます。
2.「滑膜が腫れている」のか「水がたまっている」のか
膝関節の内側には、滑膜という組織があります。滑膜に炎症が起こると厚く腫れることがあります。
一方、炎症によって関節液が増えると、関節内に液体がたまる関節水腫になります。
実際の診察では、全体に厚みがあるように腫れているのか、液体が入っているような波動を感じるのか、膝蓋骨周囲に液体がたまっているのかなどを触診しながら確認します。
ただし、滑膜炎と関節水腫は同時に存在することもあります。
3.膝に水がたまるのは、なぜ?
患者さんから「どうして膝に水がたまるのですか?」とよく聞かれます。
関節液はもともと正常な膝にも存在しており、関節を滑らかに動かす役割があります。
しかし関節内に炎症や刺激が起こると、関節液が通常より多く作られることがあります。原因として、変形性膝関節症、半月板損傷、外傷、滑膜炎、結晶性関節炎、関節リウマチ、感染性関節炎などがあります。
つまり、「水がたまった」というのは病名ではなく、膝の中で何かが起きている結果です。大切なのは、「なぜ水がたまったのか」を考えることです。
4.片膝だけ腫れているか、両膝が腫れているか
片方の膝だけが腫れている場合には、その膝に局所的な問題がないかを考えます。変形性膝関節症、半月板損傷、外傷、結晶性関節炎、感染などです。
一方で、左右両方の膝が腫れていたり、膝以外の関節にも腫れや痛みがある場合には、全身性の炎症性疾患も考えます。
関節リウマチなどでは、複数の関節に症状が現れることがあります。また、感染症のあとに関節炎が起こる病態もあります。
そのため膝だけを見るのではなく、「他の関節も痛くないか」「最近、発熱や感染症状がなかったか」といった問診も重要です。
5.赤くて熱い膝は注意が必要
膝が腫れているだけでなく、赤い、触ると明らかに熱い、強く痛むという場合には、炎症が強い可能性があります。
考える病気には、偽痛風などの結晶性関節炎、関節リウマチなどの炎症性関節炎、感染性関節炎などがあります。
特に重要なのが感染性関節炎(化膿性関節炎)です。細菌などが関節内に入り強い炎症を起こし、放置すると関節軟骨が傷み、重症化すると敗血症につながることもあります。
感染が疑われる場合には、早期に関節穿刺を行い、関節液を調べることが重要です。
6.偽痛風でも膝は突然赤く腫れます
高齢者で「昨日まで何ともなかったのに、急に膝が腫れて痛くなった」という場合には、CPPD結晶沈着症、いわゆる偽痛風も考えます。
偽痛風では、急に腫れる、強く痛む、熱を持つ、赤くなる、発熱するといった症状が出ることがあります。
そのため、見た目だけでは感染性関節炎との区別が難しい場合があります。
関節液からCPP結晶が確認されれば重要な手がかりになりますが、結晶が見つかっても感染が同時に存在する可能性は完全には否定できません。必要に応じて関節液検査で感染と結晶性関節炎を鑑別します。
7.関節液の見た目から何が分かる?
関節穿刺を行った場合、医師はまず関節液の見た目も確認します。正常に近い関節液は、一般に透明から淡黄色です。
一方、濁っている、白っぽい、血が混じっている、膿のように見える場合には、炎症や出血などを考えます。
ただし、関節液の色だけで診断することはできません。濁った液体は結晶性関節炎でも感染性関節炎でも炎症性関節炎でもみられます。
感染が疑われる場合には、細胞数・分画、Gram染色、細菌培養、結晶検査などを行います。
8.血が混じっている関節液は何を意味する?
外傷後の膝では、関節内に血液がたまることがあります。これを関節血症といいます。
原因として、前十字靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、関節内骨折、骨軟骨損傷、一部の半月板損傷などを考えます。
ただし、関節穿刺の際に針が小さな血管に当たり、採取した関節液に血液が混じることもあります。
そのため、「血が混じっていた=必ず関節内出血」とは限りません。外傷歴や腫れるまでの時間、画像所見などと合わせて評価します。
9.「水を抜くと癖になる」は本当?
患者さんから非常によく聞かれる質問が、「膝の水は、一度抜くと癖になるんですよね?」というものです。
結論から言うと、水を抜いたこと自体が原因で、水がたまりやすくなるわけではありません。
問題は、関節の中に水がたまる原因が残っていることです。変形性膝関節症による炎症、半月板損傷、滑膜炎、結晶性関節炎などが続いていれば、関節液を抜いても再びたまることがあります。
つまり、「抜いたからまたたまった」のではなく、「水を作っている原因がまだ治っていないから再びたまった」と考えます。
10.何度も水がたまる場合は、原因を探す
何度も関節水腫を繰り返す場合には、単に毎回水を抜くだけではなく、なぜ水が増えているのかを確認することが重要です。
変形性膝関節症、半月板病変、慢性的な滑膜炎などが原因となることがあります。
また、膝だけでなく下肢全体に強い浮腫がある患者さんでは、膝関節だけを見るのではなく、全身状態や浮腫の原因も確認する必要があります。
関節水腫を繰り返す場合には、症状や診察所見に応じてレントゲンやMRI、血液検査などを追加します。
前編まとめ|「膝に水がたまる」は診断名ではありません
膝が腫れたり、水がたまったりする原因は一つではありません。
大切なのは、腫れているか、熱があるか、赤いか、片側か両側か、急に起こったか、関節液はどのような状態かを組み合わせて考えることです。
そして、「水がたまったから抜く」だけで終わらず、なぜ水がたまったのかを診断することが重要です。
後編へ続く
【K-003 後編】引っかかる・ロッキング・力が抜ける・急に腫れる|注意したい膝の症状
後編では、引っかかり、ロッキング、可動域制限、giving way、膝の音、外傷後の急速な腫脹、早期受診が必要な症状、関節液検査・血液検査・レントゲン・MRIの使い分けについて解説します。
医学的確認について
本記事は、合田医師の一般整形外科診療における臨床経験と診察手順を一次情報として構成し、標準的な整形外科・リウマチ領域の医学知見と照合して患者さん向けに編集しています。関節液の見た目だけで感染やCPPDを確定しないこと、結晶が確認されても感染を完全には否定できないことなどを反映しています。
監修者プロフィール
合田 猛俊
医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士
佐々木 拓郎
北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
清藤 直樹
岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
記事情報
記事番号:K-003
記事名:膝の痛みと一緒に現れる症状|腫れ・水・熱感・引っかかり・力が抜ける
掲載区分:前編/膝の腫れ・水・熱感・関節液
シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション
監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹
公開日:未定
更新日:未定
