K-005 整形外科医は膝痛をどう診断する?【前編】歩き方・問診・視診・触診・徒手検査|診察室で何を見ている?

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K-005 整形外科医は膝痛をどう診断する?

【前編】歩き方・問診・視診・触診・徒手検査|診察室で何を見ている?

監修

合田 猛俊

佐々木 拓郎

清藤 直樹

膝が痛くて整形外科を受診したとき、「先生は膝のどこを見ているのだろう?」「少し触っただけで何が分かるのだろう?」と思ったことはないでしょうか。

膝痛の診断は、レントゲンやMRIだけで決まるものではありません。

ごうだ整形外科では、問診、歩き方、痛む場所、視診、触診、可動域、圧痛、不安定性、徒手検査と診察を進め、その結果を最後に画像と照らし合わせて原因を考えます。

大切なのは、「画像に異常があるか」だけではなく、その異常が患者さんの症状と本当に結びついているかを確認することです。

1.まず看護師が取った問診を確認します

診察を始める前に、まず看護師が事前に取った問診を確認します。

いつから痛いのか、どこが痛いのか、何をすると痛いのか、転倒やスポーツなどの外傷があったか、腫れがあるか、歩けるか、過去に同じ膝を傷めたことがあるかなどを確認します。

ただし、問診票だけで診断できるわけではありません。患者さん本人と話しながら、不足している情報を追加していきます。

年齢、痛みの場所、発症時期、外傷歴、腫れ、ロッキングなどの機械的症状は、膝痛を評価するうえで重要な情報です。

2.診察は「診察室へ入ってくるとき」から始まっています

患者さんが診察室へ入ってきたとき、すでに診察は始まっています。

まず見るのは歩き方です。

痛い側をかばっていないか、跛行していないか、膝を曲げずに歩いていないか、左右の歩き方が違わないか、普通に体重をかけられているかなどを確認します。

診察台に横になってからだけでは分からない情報が、歩行には表れます。

「膝をかばってどのように歩いているか」も診断の一部です。

3.患者さん自身に「どこが痛いか」を触ってもらう

次に、「実際にどこが痛いですか?」と患者さん自身に触って示してもらいます。

ただし、これは意外に難しい質問です。

患者さんの中には、「膝が痛いです」と言いながら膝全体を示す方も少なくありません。

患者さんにとっては、内側、外側、お皿の周囲、関節の奥と細かく区別していないことがあります。

そこで、患者さんの訴えを聞いたあと、医師が実際に膝を触って圧痛がどこにあるのかを探していきます。

4.ベッドでは最初に膝全体を見ます

患者さんには膝が見える状態で診察台に横になってもらいます。まず行うのは視診です。

膝全体が腫れていないか、左右差がないか、明らかな変形がないか、内出血がないか、発赤がないかなどを確認します。

変形性膝関節症では内反変形などが目立つことがあります。

一方、外傷後に急激に腫れている場合には、関節内出血や靱帯損傷、骨折なども考えます。

5.触診は膝蓋骨(お皿)周囲から始めます

触診のやり方は医師によって多少異なります。

合田医師の場合は、まず膝の上方から診察し、膝蓋骨周囲を確認します。

膝蓋骨周囲を触る、膝蓋骨を押してみる、圧痛がないか、熱を持っていないか、関節に水がたまっていないかなどを確認します。

膝蓋骨周囲の診察では、膝蓋大腿関節や膝蓋腱、滑液包など、前方のさまざまな組織を考えます。

6.膝を曲げ伸ばしして可動域を確認します

次に膝を実際に曲げ伸ばしします。

重要なのは、膝が完全に伸びるか、どこまで曲がるかです。

同時に、曲げる途中で痛むのか、最後まで曲げたときに痛いのか、伸ばす途中で引っかかるのか、硬く止まるのかも確認します。

変形性膝関節症、関節水腫、関節拘縮、半月板病変などでは、可動域が制限されることがあります。

7.圧痛の場所を一つずつ探します

次に、膝のどこを押すと痛むのかを詳しく調べます。

内側関節裂隙では半月板損傷や内側型変形性膝関節症、外側関節裂隙では外側半月板や外側関節面の問題を考えます。

内側側副靱帯付着部では外傷歴があれば内側側副靱帯損傷、関節裂隙より少し下の鵞足部に圧痛があれば鵞足部の炎症などを考えます。

ランニングなど反復動作がある場合には腸脛靱帯炎も考えます。

K-001でも解説したように、数センチ痛む場所が違うだけで疑う組織が変わることがあります。

8.次に「膝が緩くないか」を調べます

圧痛と可動域を確認したあと、必要に応じて膝の不安定性を調べます。

膝には、前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯など、関節を安定させる靱帯があります。

外傷によってこれらが損傷すると、膝が通常より動きすぎたり、患者さん自身が「膝が抜ける」と感じたりすることがあります。

9.内反・外反ストレステスト

膝に内反・外反方向の力を加えて、側副靱帯の緩みを確認します。

一般的には、外反ストレスで内側側副靱帯(MCL)、内反ストレスで外側側副靱帯(LCL)を評価します。

痛みだけではなく、左右差や関節の開き方なども確認します。

10.前方引き出しテストとLachmanテスト

前十字靱帯(ACL)の評価では、前方引き出しテストやLachmanテストなどを行います。

膝を安定させた状態で脛骨を前方へ動かし、通常より大きく動かないか、終末感に異常がないかを確認します。

11.後方引き出しテスト

後十字靱帯(PCL)を評価するときには、後方引き出しテストなどを行います。

脛骨が後方へ通常より大きく動かないかを確認します。

膝を強く打った、交通事故でダッシュボードへ膝をぶつけた、スポーツ外傷などではPCL損傷を考えることがあります。

12.McMurrayテストで半月板を評価します

半月板損傷が疑われる場合には、McMurrayテストを行うことがあります。

膝を曲げ、回旋を加えながら伸ばしていき、痛みが出る、関節裂隙付近にクリックを感じる、症状が再現されるなどを確認します。

ただし、McMurrayテストが陽性だからといって、それだけで半月板損傷と確定するわけではありません。

年齢、外傷歴、関節裂隙の圧痛、ロッキングなどの症状、画像を組み合わせて判断します。

13.急性期は徒手検査がうまくできないこともあります

怪我の直後で膝が大きく腫れている場合には、患者さんが痛みで力を抜けないことがあります。

そのような状態では、筋肉が緊張する、膝を十分に曲げられない、痛みで検査が途中で止まることがあります。

そのため、特殊検査だけに頼らず、外傷の状況や腫れ、圧痛、画像検査などを合わせて評価します。

前編まとめ|膝痛の診断は「触る前」から始まっています

膝痛の診察では、問診票を見る、診察室へ入ってくる歩き方を見る、患者さん自身に痛む場所を示してもらう、膝全体を見る、膝蓋骨周囲を触る、可動域を確認する、圧痛部位を探す、不安定性・徒手検査を行う、という流れで原因を絞っていきます。

そして、ここまで診察したあとに、画像と照らし合わせます。

後編へ続く

【K-005 後編】レントゲン・MRIと診察をどう組み合わせて原因を決める?

後編では、診察所見とレントゲンをどう照合するのか、変形性膝関節症の見方、MRIが必要な場面、複数の病態が重なる膝痛、若いスポーツ選手の膝痛、コンドロマレーシアについて解説します。

医学的確認について

本記事は、合田医師の一般整形外科診療における実際の膝診察手順と臨床経験を一次情報として構成しています。膝専門医としての専門的見解を示すものではありません。徒手検査・身体診察に関する記述は、標準的な整形外科・スポーツ医学の知見と照合して患者さん向けに編集しています。

監修者プロフィール

合田 猛俊

医療法人社団GOZEN 理事長/整形外科専門医/医学博士

佐々木 拓郎

北7条ごうだ整形外科 院長/産業医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター

清藤 直樹

岩見沢ごうだ整形外科 院長/整形外科専門医/医学博士/日本人工関節学会認定医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター

記事情報

記事番号:K-005

記事名:整形外科医は膝痛をどう診断する?|問診・視診・触診・徒手検査

掲載区分:前編/問診・歩行・視診・触診・可動域・徒手検査

シリーズ:ごうだ整形外科の膝痛ナビゲーション

監修:合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

公開日:未定

更新日:未定