L-015 腰痛の治療法|薬・リハビリ・神経ブロック・手術をどう使い分ける?【前編】まず痛みを取る|薬物療法と急性期の腰痛治療

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L-015 腰痛の治療法|薬・リハビリ・神経ブロック・手術をどう使い分ける?

【前編】まず痛みを取る|薬物療法と急性期の腰痛治療

監修/合田 猛俊/佐々木 拓郎/清藤 直樹

腰痛の治療には、薬、リハビリ、神経ブロック、手術など、さまざまな方法があります。

患者さんからは、「薬で様子を見ていて大丈夫でしょうか」「神経ブロックをした方が早く治りますか」「痛みが強いと手術になりますか」といった質問をよく受けます。

しかし、腰痛治療では、最初から「この治療をする」と決めるわけではありません。

ごうだ整形外科が最初に考えるのは、「今ある痛みを、どの方法でできるだけ早く軽減するか」ということです。

痛みを取るために薬が適している患者さんもいれば、リハビリを組み合わせる方がよい患者さん、神経ブロックが必要な患者さん、そして保存治療では改善が難しく手術を考える患者さんもいます。

大切なのは、痛みが強いから手術をするのではなく、その患者さんの痛みを取るために最も適した方法を選ぶことです。

1.腰痛治療で最初に考えるのは「まず痛みを取ること」

腰痛治療の第一の目的は、まず現在の痛みを軽減することです。

痛みが強ければ、歩けない、起き上がれない、仕事ができない、家事ができない、夜眠れないなど、日常生活そのものに支障が出ます。

痛みが強い状態のまま、「姿勢を直しましょう」「筋力をつけましょう」と言われても、十分に身体を動かすことはできません。

そのため、まず痛みをある程度コントロールし、その後にリハビリや再発予防へ進める状態をつくることが重要です。

  • 薬物療法
  • リハビリ
  • 神経ブロック
  • 手術

これらはすべて「目的」ではなく、痛みを軽減し生活を取り戻すための手段です。

2.腰痛では薬物療法から始めることが多い

整形外科を受診する患者さんは、すでにある程度の痛みがあり、日常生活に支障を感じて来院されることが少なくありません。

そのため、当院では薬をまったく使わずに経過を見るケースはそれほど多くありません。

もちろん、薬にアレルギーがある、過去に薬で副作用が出た、患者さん自身が薬を希望していないといった場合には、無理に薬を使用するわけではありません。

その場合には、経過観察、日常生活動作の指導、物理療法、リハビリなどを組み合わせて治療します。

3.「腰痛だからこの薬」と決まっているわけではありません

腰痛の薬物療法では、すべての患者さんに同じ薬を処方するわけではありません。

重要なのは、痛みの強さだけでなく、「どのような痛みなのか」を考えることです。

  • 一般的な腰痛
  • 炎症を伴う痛み
  • 神経に沿って走る痛み
  • しびれを伴う神経痛
  • 長期間続く慢性痛

比較的軽い痛みであれば、一般的な鎮痛薬で十分にコントロールできることがあります。

一方、神経の痛みが強い場合には、神経障害性疼痛に使用する薬を選択することがあります。

また、何年も続く慢性腰痛や非常に強い慢性痛では、通常の鎮痛薬だけでは十分な効果が得られず、慢性疼痛に使用する薬を検討することもあります。

つまり、「腰痛」という病名だけで薬を決めるのではなく、痛みの性質に合わせて薬を選ぶことが大切です。

4.神経痛には通常の腰痛とは違う薬を使うことがあります

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などによって神経が刺激されると、お尻から足に電気が走るように痛む、足が焼けるように痛む、ビリビリする、強いしびれを伴うなど、一般的な腰痛とは異なる症状が出ることがあります。

このような神経障害性疼痛では、通常の鎮痛薬だけでは十分に症状を抑えられない場合があります。

そのため、症状に応じてプレガバリンなど神経痛に用いる薬を使用することがあります。

ただし、薬には眠気やふらつきなどの副作用が出ることもあります。特に高齢の患者さんでは転倒につながる可能性もあるため、症状だけでなく年齢や生活状況、他に使用している薬なども確認しながら調整します。

5.慢性腰痛では「強い薬を飲み続ける」だけにしない

長期間続く腰痛では、通常の鎮痛薬だけでは十分に改善しないことがあります。

その場合には、症状に応じてトラマドール系など慢性疼痛に用いられる薬を検討することがあります。

しかし、ごうだ整形外科では、「慢性腰痛だから強い薬を長期間飲み続ければよい」とは考えていません。

慢性腰痛で重要なのは、なぜ痛みが長く続いているのかをもう一度考えることです。

  • 神経への刺激が続いている
  • 筋肉が硬くなっている
  • 姿勢に問題がある
  • 体幹筋力が低下している
  • 身体を動かす機会が減っている

など、複数の原因が関係していることがあります。

薬だけで痛みを抑えるのではなく、原因に応じてリハビリや運動療法などを組み合わせることが重要です。

慢性腰痛については後編で詳しく解説します。

6.薬の効果はどのくらいで判断する?

薬を処方したからといって、効果を確認せず同じ薬をずっと続けるわけではありません。

当院では、初診で一般的な薬物療法を開始した場合、おおむね2週間程度を一つの目安として効果を確認します。

  • 痛みが減ったか
  • 日常生活が楽になったか
  • 夜眠れるようになったか
  • 歩ける距離が伸びたか
  • 副作用がないか

十分に改善していれば、その治療を継続することがあります。

一方、薬を使用しても痛みがほとんど変わらない場合には、同じ治療を漫然と続けるのではなく、薬の種類を変更する、リハビリを追加する、神経ブロックを検討する、診断そのものをもう一度確認するといった次の段階へ進みます。

7.漢方薬は少し長い期間で評価することがあります

腰痛治療では、患者さんの症状や体質などによって漢方薬を使用することもあります。

漢方薬については、通常の鎮痛薬と同じ短期間だけで効果を判断するのではなく、1か月以上の経過を見ながら評価することがあります。

もちろん、すべての患者さんに長期間使うわけではありません。効果や副作用を確認しながら、継続するかどうかを判断します。

8.急性腰痛では「薬+身体への負担を減らす」が基本

突然腰が痛くなった急性期には、まず強い痛みを落ち着かせることが重要です。

基本的には、薬物療法を行いながら、痛みを強くする動作を避けて身体への負担を減らすことを考えます。

ここでいう「安静」は、一日中ベッドに寝続けるという意味ではありません。

日常生活ができる程度であれば、無理のない範囲で生活を続けても構いません。

一方、起き上がれない、トイレへ行くことも困難、身体を少し動かすだけで激痛が走るという状態では、無理をして動く必要はありません。症状の強さに合わせて身体を休ませながら、まず痛みをコントロールします。

9.「安静にしてください」と言われても、休めない患者さんがいます

実際の生活では、「腰が痛いので数日休んでください」と言われても休むことができない患者さんもいます。

  • 仕事を休めない
  • 出張しなければならない
  • 長時間飛行機や車に乗らなければならない
  • 家族の介護がある
  • 家事や育児を休めない

など、それぞれの事情があります。

医療では、病気だけではなく患者さんの生活そのものを見る必要があります。

そのため当院では、「安静にできないなら仕方ありません」で終わらせるのではなく、その患者さんが急性期を乗り切るために、薬を調整する、より強い鎮痛治療を検討する、必要に応じて神経ブロックを行うなど、生活状況も考慮して治療を組み立てます。

目標は、必要な生活を続けながら、急性期の強い痛みをできるだけ抑えることです。

10.夜眠れないほどの腰痛は重要な症状です

腰痛治療で、当院が重要視しているものの一つが睡眠です。

患者さんから、「夜になると痛くて眠れません」と言われることがあります。

眠れない状態が続けば、日中眠くなる、集中力が低下する、疲労が抜けない、仕事や日常生活へ影響するなど、痛み以外の問題も出てきます。

そのため、「腰痛だから仕方がない」と我慢してもらうのではなく、積極的に痛みを軽減する必要があります。

当院では、単に睡眠薬を追加して眠れるようにするというより、痛みそのものを軽減し、痛みのために眠れない状態を改善することを重視しています。

薬だけで十分に痛みを抑えられない場合には、神経ブロックなど次の治療を検討することがあります。

11.薬で痛みが取れなければ「次の治療」へ進みます

薬を飲んでも十分に痛みが改善しないからといって、「もっと強い薬を増やせばよい」とは限りません。

その場合には、痛みの原因は本当に今考えている病態なのか、神経痛が強いのではないか、リハビリを組み合わせた方がよいのではないか、神経ブロックが必要ではないか、などを考えます。

腰痛治療では、一つの治療方法にこだわらないことが大切です。

薬で十分なら薬で治療する。薬だけでは難しければ、別の方法を組み合わせる。それでも改善しなければ、診断そのものをもう一度考える。

患者さんの症状の変化を見ながら、治療を段階的に調整していきます。

前編まとめ|薬は「痛みを我慢させないための第一歩」

腰痛治療で大切なのは、まず現在の痛みを軽減することです。

そのため、当院では多くの患者さんで薬物療法を治療の一つとして使用します。

しかし、薬を飲むことそのものが治療のゴールではありません。

痛みの性質によって薬を選び、一定期間で効果を評価し、十分に改善しなければ次の治療へ進みます。

また急性腰痛では、患者さんの仕事や家庭などの生活背景も考える必要があります。

十分に休めない患者さんでは、薬の調整や神経ブロックなども組み合わせながら、急性期を乗り切れる状態を目指します。

そして痛みが少し落ち着いたあとに重要になるのが、「痛みを下げる治療」から「身体を改善する治療」へ進むことです。

中編へ続く

【L-015 中編】腰痛のリハビリと神経ブロック|痛みを下げて身体を動かす

中編では、物理療法と運動器リハビリの違い、急性期に行うリハビリ、慢性腰痛の運動療法、Technogymを使ったリハビリ、高齢者が運動を続ける意味、どんな腰痛に神経ブロックを行うのか、神経根ブロックと神経叢ブロックの違い、神経ブロックが「痛みを一段下げる」とはどういうことか、MRIで原因が分からなくても神経ブロックを行う場合、神経ブロックが効かなかったときに診断を見直す理由について詳しく解説します。